Frictio

Frictio

3人の視点が指し示す、ひとつの答え——データが変えた営業組織

チーム
営業・インサイドセールス・カスタマーサクセス・イネーブルメント・プロダクト
定量変化
お気に入りの機能プレイブック・Webhook

課題

プロダクトごとに事業部が分かれ、録画・録音データがバラバラに蓄積されていた。統合後もデータが溜まるだけで、議事録の即時生成や商談情報の構造化には至らず、営業活動の検証や事業単位での意思決定を支える土台がなかった。個人の力量に依存した営業体制のまま、次の成長戦略を描く必要があった。

導入効果

Frictioの導入により、全社のミーティングデータが構造化・蓄積される基盤が整い、商談準備と商談フィードバックの自動化を実現。データに基づく客観的な課題設定が可能になり、イネーブルメント3名で約300名のセールス組織を支える仕組みが構築された。事業の意思決定の質とスピードが大きく向上した。

 株式会社ユーザベースは、「経済情報で、世界を変える」をミッションに掲げ、企業の意思決定を支える経済情報プラットフォーム「Speeda」をはじめ、経済メディア事業などを展開する企業です。

 同社のSpeeda事業は現在、生成AIやグローバル展開・M&Aの加速など、外部環境の大きな変化の中で新たな成長戦略を推進しています。その中核を担うCRO Office傘下のイネーブルメント&ストラテジーチームでは、従来の「努力で生産性を上げる」アプローチから脱却し、データに基づく意思決定と営業活動の自動化を両輪で進めるべく、Frictioを導入いただきました。

 導入から約1年、ミーティングデータの構造化基盤を活かした「商談準備スパルコン」「商談フィードバックスパルコン」といった独自の仕組みが次々と生まれ、3名のイネーブルメントチームで約300名の事業部を支える体制が実現しています。

 本記事では、事業戦略とFrictioの位置づけを語るイネーブルメント&ストラテジー統括の大道寺様、導入の意思決定と全社展開を推進した千葉様、現場の育成・フィードバック自動化を設計する新藤様——異なる役割を担う3名のキーパーソンに、それぞれの視点から語っていただいた。

大道寺 咲栄

執行役員 営業戦略・イネーブルメント統括

大道寺 咲栄

千葉 未来

イネーブルメントマネージャー

千葉 未来

新藤 春奈

シニアイネーブルメントマネージャー

新藤 春奈

Voice 1|経営層の視点

大道寺 咲栄氏 執行役員 営業戦略・イネーブルメント統括

イネーブルメント組織のミッションを教えてください

一言でいうと「事業の成長を仕組みで加速させること」です。従来のイネーブルメントは「ハンズオンで教える・育てる」というイメージが強いと思いますが、我々の役割はそこにとどまりません。大きく2つの柱があります。

1つ目は営業活動の自動化です。これまで現場の努力で生産性を上げようとやってきましたが、限界も見えていました。ですので、仕組みを構築さえすれば高い質のアウトプットが出てくる状態を目指しています。

2つ目は事業の意思決定を支える土台づくりです。これまで十数年間、優れた製品力や個々人のスキル強化、オペレーションを効率化することで成長ができてきた反面、セールス組織において検証を回してデータをもとに意思決定するという文化やプロセスが十分に整っていなかった。顧客・プロダクト・セールスの一次情報を構造化・分析し、個別の話ではなく事業という単位で適切に判断できる材料を揃えていく。それが今、我々に求められている役割だと考えています。

生成AIの登場によって、イネーブルメントに求められる能力そのものが大きく変わりました。検証すべきテーマをどう設定するか、情報をどう構造化するか、それをAIと組み合わせてどう仕組みに落とすか。そちらの方が今は圧倒的に重要になってきていると感じています。

Frictioをどのように位置づけていますか?

我々はFrictioを「録画文字起こしツールではなく、意思決定のためのツール」として捉えています。

ソフトウェア業界は今、生成AIをはじめとする外部環境の激しい変化の中にいます。こうした変化の中で正しい意思決定をするには、現場の一次情報を正しく認識することが極めて重要です。顧客が何を求めているのか、プロダクトのどこに価値を感じているのか、営業のどこに伸びしろがあるのか——こうした問いに対して、個々人の経験や感覚など限られたエピソードではなく、データをもとに答えられる状態が必要です。

Frictioがあることで、商談という一次情報が構造化されて蓄積されていきます。この一次情報こそが、顧客・プロダクト・セールスを分析する上で最も信頼できるデータだと思っています。これ以上のデータはないんですよね。お客様が実際に何をおっしゃったか、どんなオブジェクションがあったか。それが個別の話ではなく、組織としての傾向として見えるようになる。これは事業の意思決定に対して非常に大きなインパクトがありました。

もう一つ、Frictioが我々にとって欠かせない理由があります。今後もM&Aや新規事業開発で新たなプロダクトや組織が加わっていく中で、その都度イネーブルメントをゼロから立ち上げるのは現実的ではありません。ただ、Frictioのデータ基盤をもとにした仕組み—例えば商談準備スパルコンのような仕組みがあれば、それを新しいプロダクトに対応させていくだけで展開できる。PMIを進めていく上でも、非常に心強い追い風になっています。

正直に言えば、この仕組みが1年前、2年前にあったら、もっと適切な投資判断や改善ができた部分もあっただろうなと思うくらいです。それほど、今の我々の局面にぴたりとはまっているツールだと感じています。

Voice 2|仕組みの設計者の視点

千葉 未来氏 イネーブルメントマネージャー

Frictio導入前、どのような課題がありましたか?

もともと我々は、SPEEDA・INITIAL・FORCAS(※)といったプロダクトごとに事業部が分かれていて、録画・録音ツールもそれぞれの組織が好きなものを好きなように使っている状態でした。

Speeda事業として一つに統合することになった時、当然ながらデータもバラバラだったんですよね。SPEEDAのデータはこっち、INITIALのデータはあっち、FORCASのデータはそっち。横断して見にいけない、越境できないという課題が明確にあり、集約しなければいけなくなりました。

また、営業やCSからすると、ミーティングが終わったらすぐに議事録が作成されていてほしい、書き起こしがすぐ確認できる状態になっていてほしいという理想があったんですが、当時のツールではそこまで応えきれなかったんです。

どのような点を評価してFrictioを選んだのですか?

全社での採用にあたり、どのツールに統一するのがベストなのかをきちんと判断しようと思い、機能比較・価格比較・得られるメリットの整理を徹底的に行いました。文字起こしの精度、要約の精度、書き起こし速度といった機能面の比較に加えて、ROI的にどうなるかも試算した上で、各組織のステークホルダー全員に意見を確認し、合意を取った上でFrictioへの切り替えを決めました。

導入のファーストステップは「データを1箇所に集めること」。蓄積した後の活用は、正直なところ、導入時点ではそこまで議論していなかったんです。

結果的に、このときの判断は正しかったと思っています。部署の方針とFrictioのデータ活用の可能性が合致しているとわかったのは、導入後のことでした。ミーティングデータをここまで構造的に持てるプロダクトはFrictioしかなかった。今やりたいことができている状態を考えると、あの時しっかり比較検討して真剣に向き合ってよかったなと感じています。

イネーブルメント組織で社内用に開発されたというAIエージェント「スパルコン」はどのように生まれたのでしょうか?

Frictioを導入して、ミーティングデータが構造的に蓄積されていく状態ができました。ただ、そのデータをどう活用するかという部分は、正直まだ見えていなかったんです。

転機になったのは去年の末頃ですね。イネーブルメントとして「営業の自動化」という方針が固まっていく中で、Frictioが持っているデータを外に取り出して活用できるんじゃないかという手応えが出てきました。

具体的にやったことはまず、社内で「この人の商談なら間違いない」と言えるシニアな営業メンバーを特定して、その方たちのミーティングデータからFrictioのプレイブックで必要な項目を構造化し、ナレッジデータを作りました。そのナレッジデータをデータレイクに取り込んで、社内のAIエージェントであるSai(サイ)と連携させています。

営業メンバーがSlack上で、これから訪問する会社名・部署名・役職を投稿すると、SAIがFrictioのナレッジデータとSpeedaのコアエージェントの両方を見にいって、近しい業界の過去のナレッジをもとに提案仮説を自動生成してくれる。これが商談準備スパルコンです。

Speedaの公開情報と、Frictioに蓄積された一次情報の両方を掛け合わせているのがポイントで、最終的にはスライド資料まで自動生成できるところまで仕上がっています。

2025年末にリリースしてからかなり使われていて、特にエンタープライズ領域のメンバーは日常的に活用してくれています。上位メンバーだと1日2〜3回使っているようなデータも出ていますね。まだ改善余地はあるんですが、それでも継続的に使われているというのは、現場にとって本当に価値があるものになっているんだなと実感しています。

Frictioがなければスパルコンは生まれなかった。ミーティングデータが構造的に蓄積されていて、かつそれを外部に取り出せる。この2つが揃っているプロダクトだからこそ実現できた仕組みだと思っています。

現場での日常的な活用はいかがですか?

前提として現場では利用者の効率化に繋がっているので毎日使われています。特に活用浸透している組織では、プレイブックを使った日報の作成を行ってます。主にCS組織で活用されていて、ミーティングが終わった後にFrictioのプレイブックで日報のたたきを自動生成させて、それを確認・加筆して提出するという運用になっています。

ゼロから自分で書く必要がなくなったので、かなりの時間短縮になっています。ただ、単に楽になったというだけではなくて、たたきの時点で間違ったことは書いていないんですよね。その上で「もうちょっとこういう書き方にした方がいいな」という部分を自分の判断で直して出すので、自分の意思もちゃんと乗っかる。そこが現場にとって使い続けられるポイントになっているのかなと思います。

もう一つは、Frictioのユーザー会で教えていただいた活用法なんですが、競合情報やFAQをプレイブックで集めておくという使い方です。「こういうデータが取れるかな」と思った時にパッと出せるようになっていて、これもすごく重宝しています。

あとはSalesforceとのCRM連携ですね。ミーティングデータが商談に紐づいて蓄積されていく状態を作りたいと思っていて、今は自動で紐づくのが半分くらい。ここはまだ課題ではあるんですが、より連携強化される相互同期の仕組みやSlack経由で簡単に紐づけられる機能の開発も進んでいると聞いているので、それが実装されればもっと紐づき率は上がるだろうと期待しています。

紐づきさえすれば、蓄積されたミーティングデータをもとにフェーズの洗い替えや商談内容の更新を促すこともできるようになる。そこはAgentforceとの組み合わせも視野に入れていて、営業の入力工数を削減しながら、確実にデータを積み上げていく流れを作っていきたいと考えています。

ただ、組織によって活用の濃淡があるのは正直なところです。うまく回っている組織の運用を分解して、良いものは横展開していけるといいなというのが今の課題感ですね。

Voice 3|現場実践者の視点

新藤 春奈氏 シニアイネーブルメントマネージャー

商談フィードバック自動化の仕組みについて教えてください

イネーブルメントとして、営業のスキルマップを整理しているんですね。準備から初回商談、提案、クロージングまでの各フェーズにキーアクションがあって、売れる営業と苦戦する営業の差が出やすいポイントを特定しています。

その中で特に大きかったのが2つ。1つは準備段階で、顧客に沿った課題仮説をどれだけ具体的に立てられるか。もう1つは初回商談で、組織の課題を特定して論理的な提案ストーリーを組み立てられるか。前者に対してはスパルコンで対応しましたが、後者に対する打ち手として作ったのが商談フィードバックの仕組みです。

コンセプトはシンプルで、初回商談の中でお客様の課題をちゃんと特定できているか、それに対して購入する理由を論理的に提案できているか——この「ロジック」という切り口で、商談をAIが自動評価してフィードバックするというものです。

技術的には、Frictioで商談が終わるとWebhookで全文データが飛んで、それをLLMで分析した結果がSlackに自動で返ってくるという流れです。バリューセリングの観点でスコアリングされて、ロジック構成が弱いところ、改善すると価値が届くであろうポイントが具体的に示されます。さらに、「こういう言い方をすればよかった」というトークスクリプトのレベルまで提示してくれるので、営業が商談後すぐに改善アクションを取れるんですね。

出口としては大きく2つあります。短期的には、案件の引き上げです。商談の中でできなかったことを、その後の電話フォローなどで補って受注につなげていく。中長期的には、育成への活用です。1〜2ヶ月回していくと、「このメンバーはこの観点が弱い」という傾向がデータとして見えてくる。それをもとに成長ロードマップを作って、継続的なスキルアップにつなげていくという使い方を今まさに始めたところです。

実は最初、スキルマップの全項目を一気に評価しようとして、精度が上がりきらずにつまずいたんです。そこでSYSLEAの大橋さんと一緒にプロンプトを練っていく中で、シンプルな「ロジック」という切り口に絞り込んだのが大きな転換点でした。評価の焦点を定めたことで精度がぐっと上がって、現場で使えるレベルになった。あのプロンプト設計は本当に肝だったと思います。

この仕組みを運用をしながら見えてきたことはありますか?

大きく2つあります。現場のリーダーとイネーブルメントの目線が合うようになったことと、リーダーとメンバーの間でも課題認識が揃うようになったことです。

まず前者ですが、日々のフィードバックって、どうしてもリーダー個人の感覚に依存してしまうんですよね。評価の観点にずれがあったり、少し甘くなってしまったり。そこに属人性が出てくるのは仕方がないことではあるんですが、組織として見た時にフィードバックの質にばらつきが出てしまう。

そこに商談フィードバックスパルコンの客観的な評価が入ることで、リーダー自身のフィードバックのチューニングになるんです。「自分では課題がないと思っていたけど、データで見ると実はここに伸びしろがあった」ということが可視化される。例えばISのコール一つとっても、そもそもやるべきことが実施できていないという事実が客観的に出てくる。リーダーの感覚だけでは見落としていた部分が明らかになるんですね。

これによって、イネーブルメントから見た課題と現場組織の認識がまず合う。ここが合うと、その後の施策が圧倒的に進みやすくなります。

後者のリーダーとメンバーの関係でも同じことが言えます。何かを変えていこうとする時に、課題の共通認識がしっかり持てていないと、その先の打ち手が回らないんですよね。もちろんメンバーとリーダーの間には信頼関係がありますから、リーダー側からの課題提起で合意して進めていくことも大事です。ただ、少数の商談の印象だけで話をするのと、データや根拠をもとに「ここが課題だよね」と認識を揃えるのとでは、その後の動き方がまったく違ってくる。

結局、課題設定の精度が上がったことが一番大きい変化だと感じています。課題が正しく設定できれば、打ち手も的確になるし、現場の納得感も得られる。フィードバックの自動化というと効率化の文脈で語られがちですけど、本質的な価値はそこではなくて、組織として共通の物差しを持てるようになったことだと思っています。

3人の視点が指し示す、ひとつの答え

大道寺氏は「意思決定ツール」と語った。千葉氏は「データの1箇所集約」から始まる基盤を設計した。新藤氏は、そのデータを現場の営業力に変換する仕組みを磨き上げた。

3人の取り組みに共通するのは、Frictioを単なる録画・文字起こしツールとしてではなく、組織のデータインフラとして活用していることだ。その結果、3名で300名規模のセールス組織を支えるスケーラビリティが実現し、イネーブルメントの役割そのものを「教える」から「仕組みをつくる」へと進化させている。

「効率化」や「時間削減」ではない。営業データが事業の意思決定を動かす——ユーザベース様の事例は、Frictioが拓く新しい組織のあり方の可能性を示している。

※SPEEDA、INITIAL、FORCASは当時のプロダクト名称をそのまま記載しています。現在はサービス名称が変更されています。