CRMを整えても、顧客の一次情報は残っていなかった

—— 粟津様がMODEへ参画されたのはどのようなフェーズだったのでしょうか。
私が入社したのは2024年3月で、入社当初は、マーケティング部門の立ち上げやブランド設計、自社イベント開催などを行い「現場向けAI」という認知拡大に取り組んでいました。マーケティング活動において、データを拠り所にしたかったんですが、多くの組織と同じように当時は社内でMA/CRMを使いこなせておらず、入力されている情報がまばら、かつ人によって記載の粒度が違う、というはちゃめちゃな状態でした。MAとCRMはそれぞれ契約していたものの、利用が十分に定着しておらず、データ量も入力の粒度も不十分で、せっかくのツールを使いこなせていない状態でした。実際、社内メンバーがCRMのデータをローカルにダウンロードしてスプレッドシートで中身を拡充したり、整えたりしているのを目撃したこともあります。
当時は何が正しいデータなのかさっぱり分からない状態。誰がいつどこへ行って、どれくらいの工数をかけているのかすら分からない。
なので最初にやったプロジェクトのひとつが、MAとCRMの統合です。その後は受注フェーズに近い情報を拡充し、商談日数や金額規模が見えるようになりましたが、裏を返すと、受注周りしかよく分からない、という状態でした。
—— 立ち上げ期の企業だとそういった状況もありますよね。その後、顧客情報の管理はどのように進めていったのでしょうか。
2025年の夏、HubSpotに蓄積されたデータをChatGPTから参照できるようになり、CRM内の顧客・商談情報を自然言語で直接分析できる環境が整ったことが、大きな転換点でした。 AIを経由してあらゆる情報を可視化できるという期待を持ったものの、一方でデータの真実性や量が不十分であることは明らかでした。いわゆるプログラミングの世界で言われる”Garbage in, garbage out(質の低いデータを入れれば、質の低い結果しか返ってこない)”になるだろうと思っていました。
データの重要性にこだわる姿勢は、私たちが提供するBizStackにも根付いている価値観です。顧客との会話、という一次情報を、組織が参照できるSingle Source of Truth(SSOT)*としてどう取得し、どう蓄積するか。それがAIを使いこなす上で重要になると考えていました。
*シングルソースオブトゥルース(SSOT)・・・同じ情報が複数箇所で食い違わないよう、組織として正式に参照する情報源を定める考え方。
そこで営業担当が現場で行う会話をいかに取得するか、いかにAIが使いやすい形で残すか、という点でサービスを探し始めていました。
AIが使える形でデータが残るか — AIネイティブなツール選定の基準

—— ツールを選ぶ基準を教えてください。
ここはシンプルに、目的をいかに明確に定義するか、ですね。みんなが使っているからとか、シェアナンバーワンだからとか、多機能だからとかでは決して選ばないです。思い描いているワークフローに乗せられるか、情報が滞りなくまとまるか、という観点を重視しています。今後AIが業務のインターフェースになることを確信しているので、今はデータをAIが扱える形で残らないツールは絶対に契約しないと決めていて、機能数や知名度よりも、AIがそのデータを利用できる設計になっているかを重視しています。
—— そのなかで、Frictioはどのように知っていただいたのでしょうか。
AIネイティブなオペレーションを実現したかったので、そういった領域で発信をされている方と意見交換を積極的に行っていたんですが、そこで紹介してもらったのがFrictioでした。当時すでに文字起こしツールを導入していたのですが、情報の取り方・持ち方に課題を感じていました。例えば議事録は取れるし、サマリーも見られますが、AIが読み取りやすい形になっていない。加えて、その情報をCRMや他のサービスで利用しようにも、iPaaSなどを自分で組み上げる必要があり、そのオペレーションは現実的ではない、と判断しました。
Frictioに感じた魅力は顧客のコンテキストをデータベース化していることと、Frictio自体にワークフローが組み込まれていることですね。SaaSの中には、後からMCP対応を加えたり、LLMをラップした形でAI機能を追加したりしているものも多いのですが、重要なのはそもそもの情報の取り方やデータベースの持ち方だと考えています。
—— 実際、LLMを活用する、という選択肢は挙がらなかったんでしょうか。
挙がりましたし、実際に使っていましたね。例えば録音した会話を音声認識で文字起こしし、その文字起こしデータをLLMで要約したり、アクションアイテムを抽出したりすることは、プロンプトを工夫すれば一定以上の精度でできます。じゃあ何が決め手でFrictioを選んだかというと、コンテキストをどうAIという知能に与えるか、という点です。例えばLLM単体では、企業固有の顧客情報や業務コンテキストを継続的に持っているわけではありません。毎回、適切な情報を与える必要があります。 与える情報が不十分だったり、大きすぎたりすると、期待した回答が、期待したスピードやコストで返ってこない。一方Frictioでは、顧客との会話そのものを一次情報として取り込んで構造化していますよね。重要なのは、人が毎回AIにコンテキストを手作業で与えるのではなく、業務の中でコンテキストが継続的に蓄積され、必要なときに必要な分だけAIが参照できる設計にすることだと考えています。 今まで社員間で共有できなかったドメイン知識や業務情報を、ちゃんとコンテキストとして保持して共有できる。組織で強くなるには、当たり前に必要になる考え方だと思います。
会議をなくしたかったわけではなく、結果なくなった

人がレポートする工程が丸ごと外れ、顧客との会話という一次情報が自動的に組織へ上がってくる経路に置き換わった。営業の定例会議は、その結果として不要になった。
—— 最初に取り組まれたのが、営業の定例会議をなくすことだったと伺いました。報告のための会議は無駄だからなくそう、という発想だったのでしょうか。
実は会議をなくしたかったわけじゃないんですよ。結果なくなった、という順番です。Frictioを導入する前は結構面倒なことをしていました。会議を録音し、LLMに録音データを投げて抽出された情報から必要なところを拾い、営業目線で手直ししてCRMに入力し、それを社内のチャットに投げる。これによって個々の作業を一定は効率化できていたんですが、人が介在すると、その人の言語化能力、感情に左右されて、情報の質も量も落ちてしまいます。結果、何が事実か分からなくなる。もちろん要約自体を否定しているわけではなく、顧客との会話を残したうえで、用途に応じてAIが要約することが重要だと思っています。なのでとにかく人間の言語化能力に依存する状態をワークフロー自体からなくしたい、と考えていました。
—— Frictioを導入してワークフローはどう変わったんでしょうか。
当社の場合、対面の商談や現場訪問が多いですが、Frictioのモバイルアプリを使っているので、会話データは自動的に取得され、整理され、CRMに入力されていきます。
マネージャーにとって、人を介さずに、一次情報を確認したほうが、より適切に状況を把握できるはずです。現場の熱量は基本的にはしっかりマネージャーにも伝えてほしいんですが、レポート自体に熱量はいりません。様々な意思決定がドライにクールに行えるようになりました。
また当社では営業、デリバリー、カスタマーサクセスを行う担当が分かれています。受注後のデリバリー担当者も、営業から改めて説明を受けるだけではなく、顧客とどのような会話を重ねてきたのか、どのような背景や期待があるのかを一次情報から確認できるようになりました。
AIを前提に組織を設計する

—— 最後に、これからどのようなことを実現したいですか。
顧客接点で得られる一次情報は、エンタープライズ営業領域における、アカウント(会社)の一次情報でもあります。これをしっかりと蓄積することで、AIと繋げた時に、AIが自然に働いている状態になると考えています。だからこそ、今後は、この一次情報を組織として蓄積できるかどうかが、AIを使いこなせる企業とそうでない企業の差になっていくと思います。
ChatGPTを全社で使ってるからAIネイティブなんです、というのは間違いです。個々人がAIと対話して出力されたものをそのまま成果物として他者に出すような状態では、AIに「使われている」のと同じです。会社としてAIを前提に組織と業務をどう設計するかを決め、AIが自律的に動くためのルールを作り、人間側が判断、創造、交渉、そして責任を担える状態になるまで業務と組織を変え切ることをやりたいですね。そこまでいって初めてAIネイティブな経営が実現できていると言えるはずです。
Frictioで、コンテキストが溜まる働き方へ
MODE様のように、顧客との会話を「議事録」から「AIが使える一次情報」へ変えませんか。Frictioは、顧客との会話をそのまま記録してAIが構造化し、API・MCP経由で対話型AIや社内のツールから参照できる状態にします。コンテキストを人が与えるのではなく、業務の中に自然に溜まっていく状態をつくります。
自社の顧客接点でいま何が一次情報として残っているか、実際の画面で確認できます。
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