「議事録の墓場」が課題に。一次情報を取得段階で構造化するためFrictioを導入
Frictio導入前の課題を教えてください。
投資業務の中で、起業家や出資者の方々とお話をすることは非常に重要なプロセスです。多種多様な方と日々お話をするわけですが、その記録作業、入力作業に苦労をしていました。
人間が面談したら頑張って記録する。ピッチ資料からコピペして頑張ってデータベースに格納する、という作業をやっていました。正直に言うとその作業の中でAIが担う部分がありませんでした。
とにかく出力されたものを貼り付けるだけで見返しもしなかったので、結果的に議事録が溜まっていくだけの情報の墓場になっていました。
当時、特にネックになっていたのはどんな部分ですか。
面談の一次情報を活用することを考えると、面談の情報がその後の工程で使いやすい状態になっていることが重要です。当時はそれを実現するために、iPaaSなど外部の連携ツールに課金をして、Google Driveにファイルを無理やり出力し、それを別の形式に切り替えさせて、さらに手入力で情報を格納する、という煩雑な運用を行なっていました。手間もコストも高くなりますし、無理やりつなげたところでAIが読み取りやすい形になっていないので、結果AIのアウトプットの質が上がりませんでした。
そもそもこういったデータ加工や入力工程は、時間と労力がかかる割にはバリューがない作業です。だったら、AIに任せられないか?と常々考えていました。

その流れのなかで、Frictioを選んだ決め手は何でしたか。
やはり面談の一次情報を、取得した段階で構造化できることが何よりも重要で、さらにMCPやAPI、Webhookなど複数の連携に対応しているサービスを探していました。その中で紹介されたのがFrictioでした。
また、私は今後AI to AI(AtoA)※の時代が来ると確信しています。その意味で、AIが仕事を進めることを前提に開発されているFrictioの設計思想が私たちの思想と合致していたこともあり、当時のサービスから乗り換えることを決めました。
※AI to AI(AtoA):自律的に判断するAIエージェント同士が、人間の介在を最小限にしながら、互いに連携して仕事を進めるビジネス領域。

面談の前後を自動化。入力が消え、ナレッジが積み上がる
今構築しているフローを順に教えてください。
まず投資先の候補となる企業を見つける工程から。ここは、PR TIMESやXの情報を自動で網羅的に取得し、そこからスコアリングし、自社でリーチすべき企業が現れたらCRMに自動で登録されてショートリストに入り、Slackに通知連絡が来るという仕組みを作っています。把握したスタートアップは全部登録する、という動きですね。登録している企業が事業をピボットしたり、新しいプロダクトをローンチしたりしたときは、アプローチをすべきかどうか示唆を出す仕組みもあります。
面談前の準備や面談中の対応は、どのように行っていますか。
面談前の準備は、全てスキル化しています。ピッチ資料の事前分析から評価、面談ブリーフィングの作成が自動で行われます。そのサービスがコモディティ化のリスクをどれだけ抱えているのかとか、起業家から事前に提出された資料を定性面・定量面の両軸で評価し、採点とその根拠、また聞くべき質問リストが生成されます。
質問はそのまま使えますし、面談をしながらFrictioのリアルタイム書き起こしを元にAIと対話しながら、その場で質問をアップデートすることもあります。
面談が終わった後は、何が起きますか。
Webhookでミーティングが終わったことを検知して、そこからワークフローが勝手に動きます。手作業はありません。Frictioのプレイブック※で構造化した一次情報をベースに、CRMに情報が入力されます。プレイブックを通すことで、先にノイズの除去やデータの正規化が実現でき、CRMへ自動入力される際の情報のブレを減らし、結果としてAIが推論を働かせる際の勘違いの余地を減らしています。
また現在は、面談の記録を読んだり、CRM入力したりする作業はもう行っていません。
私が手を動かすのは、自分の見立てをコメントで足すときぐらいです。その後は、Frictioから面談記録を引っ張り、この面談記録を踏まえて評価内容をアップデートしてくれ、と言えば勝手にアップデートされます。最終的に問題ないと判断した情報がCRM側に残るようになっています。
※プレイブック:会話から抽出する項目をあらかじめ定義し、面談ごとに同じ形式で情報を整理するFrictioの機能。

蓄積された情報は、どのように使われていますか。
面談の情報が起点になって、人物、テーマ、ディール、意思決定といった複数の形にAIが情報を分類します。情報がある程度溜まると、AIが溜まった情報で推論をはじめマクロトレンドやビジネスモデルなどに対する仮説を自動で生み出します。それが何度も同じ話題として出てくると、確定した情報として記録されていく。ここの判断も運用も自動で行われています。
想定していなかった使われ方はありましたか。
面白いことに革新性のあるアイデアが勝手に生まれています。Frictioで多種多様な人との会話を記録しているので、アイデアとアイデアが結合し、新しいアイデアが勝手に生まれるんです。同じミーティングを何度もしていたり、業界の最先端の方と話していると、ナレッジベースの質が上がり、そのナレッジベースがまた次の面談の示唆を行ってくれるので、やればやるほど複利が利く、という状態になっています。
人が行う作業を最小化。人を介さないことが正解だった
一連の仕組み化によって、何がいちばん変わりましたか。
今までは、時間をかけて、体力をすり減らしながら情報を収集し、整理し、入力しなければいけなかったのが、今では全ての作業がなくなりました。面談の登録作業も、人によっては1時間以上かけていたものが、レビューしてクリックするだけで終わります。
今の体制は、人を増やすことで実現するという方向はあったのでしょうか。
実は人を増やしてもこの体制は実現できないんですよ。人間だったら、その時の気分やコンディションで、入力内容にブレが生まれてしまいます。ワークフローにおいて、同じ手順で、同じような出力の形式で、比較できる状態で情報が溜め込まれなければいけないのに、人間がいるとそこがブレる。データの正規化という目線で見ると、人を介さないことが正解だと思います。
となると、人の役割はどうなるんでしょうか。
私は、通常業務においてワークフローのメインはAIになるべき、という思想を持っています。人間は、アウトプットの出入力の内容を評価し、レビューをし、時には直せばいい。エンジニアを事例に挙げますが、彼ら彼女らはもう誰もコーディングしていませんよね。すでに設計やレビューしかしていないはずです。同じことが他の全ての領域で起こりえます。
Frictioを使わず、自社で同じ仕組みを作る選択肢はありましたか。
基本スタンスとして、自社のメインの事業としてやらないのであれば、その領域に精通し、技術を突き詰めている企業にお願いするのが最適解だと思っています。Claudeを使って内製化する話は一部で盛り上がっていますが、メンテナンスや拡張性、セキュリティなどを自分たちがその先々で本気で取り組む必要が出てきます。その負担を考えた時に、設計思想として同じ方向を向いている会社さんに任せるのがやはりベストだと判断しました。
これから同じように業務の型化やナレッジ基盤構築を始める組織に、何かアドバイスはありますか。
AIネイティブ化しようとすればするほど、MCP、APIを活用する前提のもとで、データの持ち方、データの正規化の方法に対する考えにこだわる必要が出てきます。私たちにとっては、AIネイティブ化に向けた変革の中で、会話という一次データを活用する前提でリアルタイムに構造化してくれるサービスを求めていたので、その結果Frictioを選ぶに至っています。
AtoAの経済圏を見据えて。いまが分水嶺
今後、どのような未来を見据えていますか。
過激に聞こえるかもしれませんが、人間の時代が終わった、というのをまず認識するべきだと思っています。これからワークフローを進める主役はAIになります。通常のワークフローはAIが担い、人間は建築家のように構造を考える役割や、例外処理、ヒューマンインタフェースが重要な営業シーンなどでしか価値が発揮できない。だからこそ、今、思考からオペレーションまで思いっきり変える必要があると思っています。
AIネイティブというのは、つまりワークフローが完全にAI化するということですが、そうなったときに、これからの経済のメインはAI to AI、Agent to Agentに移行していきます。人間の実世界よりも何百倍と大きい経済圏になり、めちゃくちゃ巨大な市場が生まれます。だからこそ、私たちはそこに食い込むためにはAIネイティブになることが必須である認識を持たなければいけない。
今がその分水嶺であり、どんな企業もAIネイティブ化にこだわった方がいいんじゃないの、というのが私の主張です。
そのなかで、栗島さんはこれからどんなことを目指されますか。
ナレッジの構造化層と、ハーネスとしての評価方法や、それが実現した時の組織としての振る舞いなどに興味がありますね。研究をして理論化することで大企業の方々にも広がるのではと思っています。
最後にFrictioに期待することを教えてください。
人間の言葉の中には、発言内容が正しいことが検証されていない場合があります。この辺りの検証ループが回るようになったらよりAtoA時代のナレッジ構造化が進むので、このあたりもやっていただけるとさらに良いのではと思いました。これからも期待しています。


