Voice 1|共同代表 宇尾野 彰大 氏 — 事業視点からの理想的な状態を追求する

人事の施策からは入らない。事業の成長に必要な人事をやる
—— はじめに貴社について教えてください。
今「人事」という言葉を聞いて、シビアな評価をする方が多いと思います。背景にあるのは旧来の日本の人事と、それを支えてきた人事コンサルの形が、大局で言うとうまくいっていなかったということだと認識しています。だからこそ私たちは、これまでの人事のあり方に、アンチテーゼを持っています。顧客の支援に入るとき、私たちは人事の施策からは始めません。経営者がいま何を考えていて、どんな経営課題に困っているのか、それを人事でどう解決すると良いのかにこだわり続けています。事業の成長に必要な人事をやるというのが、私たちの一貫した価値観であり、それをそのまま社名にして「事業人」としています。
顧客提案の前に、AI活用の試行錯誤を自社で回す
—— 人事領域にいらっしゃる観点から、AIについてはどのようなスタンスをお持ちでしょうか。
弊社は「Future Enabler」をタグラインに、経営が前に進むことを何よりも大事にしています。進める方法が、人なのかAIなどの機械なのかは極論関係ありません。人とAIの協働や、AIにどうやって業務を推進させるかが、私たち自身の中でも、顧客企業の中でも、大きなテーマになってきています。
AIでどんなゲームチェンジがいつ起こるのか、どうすれば会社が伸びるのか、その明確な答えはまだ誰も持っていません。だからこそ今は試行錯誤を繰り返すことが、今後の明暗をはっきり分けると思っています。経営者自身がAIを使って爆速で仕事を回せるようになりました、という話はよく聞きますが、一人で試行錯誤しているにすぎないケースが多い。組織全体で、どれだけ試行錯誤を許容し、担保し、サポートできるかが重要ですし、そこで得た個々の学びを全体に広げていくネットワーク型の組織にできるか、という点もAI時代に欠かせない要素だと考えています。
—— その意味では事業人様の社内では、どんな試行錯誤が行われていますか?
私たちは組織づくりを支援する会社ですが、顧客の目的達成の手段として組織のAX推進・AIネイティブ化を提案することもあります。顧客にお勧めする組織のあり方を、机上の空論にはしたくないので、AIを前提にした働き方がどう回るのかを、仕組み化も含めて自社で先に検証するようにしています。そこで得たものを、世の中の事業を成長させるための組織のあり方としてアップデートし続けていく、という判断をしています。今回のAIネイティブな顧客管理の構築もその環境で生まれた取り組みの一つです。
—— Frictioに着目いただいたのも、AIがきっかけであったと伺いました。
Frictioはサービスローンチの早い段階から使っていますが、当時は議事録ツールだったと認識しています。実は以前から営業チームは別の議事録サービスを使っていました。2025年に顧客管理をするためにスプレッドシートを卒業して、Salesforceに移行することが決まり、さらにその年の後半にはMCPが盛んになったので、AI連携できることを重視し始めました。Frictioの当初の構想からもAI時代に必要なサービスを目指していたのは知っていたので、MCPで顧客との会話をAIネイティブに取り込むことを考え、組織全体で顧客との会話のキャプチャはFrictioに一本化した、という流れです。
—— Frictioを活用いただくことも視野に、CRM導入プロジェクトの推進を経営企画の平野さんに最初にお願いした、と伺いました。当時の狙いや意図をお伺いさせてください。
平野は過去にSalesforceを導入した経験があり、それを活かして早く成功体験を積んで欲しいと考えて本プロジェクトをお願いしました。私自身、経営者として今後もお客様とのより深い関係を構築し、長く事業に伴走させていただく、という理想の実現のためにSalesforceの導入を意思決定したのですが、実際は構築に時間を要したり、なかなかスプレッドシートの運用から抜け出せなかったりと、理想の状態にはたどり着けていませんでした。そこを平野がまさに理想と現実とのギャップフィラーとして試行錯誤しながらAIネイティブな形を実現してくれました。
Voice 2|経営企画・事業推進 平野 貴紀 氏 — ゴール状態にこだわることで、理想の状態を実装する

入力完了を追いかけていた自分に、ストップがかかった
—— 2026年1月のご入社とのことですが、着任されたとき、顧客管理はどのように行われていましたか。
運用していたスプレッドシート上に記録があったりなかったり、特に受注後の状況はブラックボックスになっていました。どこの会社にもある、秘伝のタレみたいな整理や運用が行われていました。入社したばかりの私には何が起きているか分からない状態。社内定例も、未来の話をする場ではなくて、前の週の取り組みを確認する場になっていました。
—— CRMはいつ頃社内に展開したんですか。
全社展開が3月の後半です。ただ、結局スプレッドシートと同じことが起きていました。メンバーに頼まないと入力してもらえない。どうやったらもっと確実にデータを入力してもらえるか、と考えていた4月の後半に、宇尾野からSlackでポロッと言われたんです。「データを入力するだけなら、スプレッドシートと変わらない。どうやったら入力してくれるか、でなく、どうすれば入力しなくて済むか、を考える方がいいんじゃない」と。みんながミーティングで喋ったことが自動でCRMに蓄積されていて、人は考えることだけに集中できる世界が理想的だよね、すぐにはできないと思うけど、といった趣旨のコメントでした。そのメッセージを見てハッとしました。いまのままだと、現場にとっては入力の負荷が増えただけで、お客様に提供する価値を高められているわけではない。サービス全体の価値向上につなげるためには、推進者である自分が思いもしなかったような「自動化」といった大きな変化を起こさなければいけない、という気づきにつながりました。
全自動ではなく、半自動にした
人の関与が入力から判断へ移り変わりました。
—— 構築されたオペレーションをお伺いさせてください。
ミーティングをすると、まずFrictioからSlackに要約が流れます。この時点でカレンダー名などからSalesforce上の関連する取引先や商談を特定し、商談内容がSalesforce側に自動で入力されます。もしも特定ができない場合は、Slack上に選択肢が表示されるようになっており、新規案件か既存案件か、A社かB社か、などの選択肢を提示。担当者が回答すると、AIが適切な商談を特定し、活動内容を自動で入力します。この仕組みを作った結果、営業は全員Salesforceにログインしなくなりました。全自動ではなく、人のレビューを挟むので、半自動ですね。この仕組みの構築には一部GASやGemini APIを活用しています。
—— 半自動にされた理由はありますか。
現在の情報だけでは、AIが正確な推論をするのに十分な根拠となる情報量にならないことがあります。なので必要なときはYesかNoかで答えられるクローズドクエスチョンで担当に問いかけを行い、承認だけをもらう仕組みにしています。
プロジェクトテーマを越えてお客様の声にアンテナを張れる仕組みをつくる
—— そのほかに工夫されている点を教えてください。
弊社のようなコンサルティング事業の場合、プロジェクト単位で仕事が進むため、顧客が初回の受注時点で持っている期待値を正確に把握します。そのうえでプロジェクト開始時に立てたアジェンダのうち、今どこまでが終わっていて、どこまでが終わっていないかをAIに仕分けさせ、今注力すべきアジェンダをメンバーにリマインドします。これはFrictioによる会話の構造化があってこそ実現できています。
また、単なる負荷軽減ではなく、メンバーのコンサルティングの付加価値が高まることを意識しています。例えば現場で行われた些細な会話などもFrictioで取得・構造化できているので、そういった内容を元に、プロジェクトオーナー自身も気づいていない「その手があったか!」と言われるような面白い切り口から次の顧客提案の内容を出力し、Slackに自動通知する仕組みも構築しました。
定例が過去の報告の場から、未来の戦略の場へ
—— 運用が回りはじめて何が変わりましたか。
基本、即日で案件状況が全部分かるのも大きいですね。私みたいな経営企画・事業推進の役割でも、全案件の状況がリアルタイムで分かる。またAIが商談状況のレポートを定期的に作成・共有するため、社内定例でもお客様にどう次の一手を提案したいか、という会話がメインになっています。
Frictioのアウトプットを信頼できるから、すべての仕組みを組み上げられている
—— 改めてこの仕組みでFrictioを活用いただいている理由をお聞かせください。
もちろん、最初は宇尾野が導入を決めたものではありますが、今ではなくてはならないものになっています。Frictioで取得できる顧客の会話情報は精度が高く、さらに構造化が適切に行われているので、MCP連携でもスムーズに意図した情報活用ができています。設計者として一番嬉しいのは、この精度と使いやすさです。Frictioから上がってくる元データは安心して活用できる一次情報なので、そこを疑う必要がなく、マインドシェアを他のものに割くことができています。
短期間で実現できた理由は、事業目的に立ち返れたから
—— ここまで伺っていて、平野さんが言うなれば「AIの素人」だったとは思えないです。
正直、最初はAIをチャットで使うことしかできなかったので、いま自分がここまでAIを触っている想像は、1ミリもつかなかったです。
振り返ると、ここまで突き詰められた要因は3つほど思い当たります。1つ目は、宇尾野と私の強みがうまく棲み分けられていたこと。宇尾野の描く理想像を頼りに、私も本来の目的に立ち返って、理想と現実のギャップを埋めていきました。2つ目が設計に集中できたこと。技術を知らないからこそ、どういう構造・関係性でプロセスとデータが成り立てばいいのか。その設計に集中できました。それさえできれば、やりたいことはAIを駆使して実現できると信じ、技術に対する苦手意識を消して取り組んでいました。3つ目が、現場のメンバーを巻き込めたこと。実運用に入る前に、2、3社の案件でオペレーションを回してみたり、お客様との定例でAIが出した示唆をそのまま使ってみたりして、一緒に成功や失敗の体験を積みました。
—— これからどんなことを目指されますか。
AIネイティブ化を突き詰めたいです。究極的に人がやることは「考える」「意思決定する」だけの状態を実現することですね。ただ一気に進めると、「どうせ自動化できるから」という理由で、人が顧客や案件にアテンションを張りづらくなり、考えることを諦めてしまうのではと危惧しています。そこで今は既存のお客様への支援を、意図的に今回構築した半自動フローの対象外と設定し、AIのサポートがない状態での支援体制も残しています。この2軸のバランスの追求が今後のテーマになりそうです。
2人の視点が指し示す、ひとつの答え
ツールはあくまでも目的達成の手段。宇尾野氏が示した「入力しなくて済む状態にはできないのか」という本質的な論点を皮切りに、平野氏が目的達成を追求した結果、AIネイティブな顧客管理体制を実現した。同社の事例から再現できるのは、AIがワークフローの主体になることを前提に、理想像を追求し、それを徹底的に実現する、という事業目線の理想像に立ち返ることだった。言い換えればAIネイティブ化ということすら同社にとっては手段でしかない。しかしこのAIネイティブ化の根幹には、Frictioを単なる録画・文字起こしツールとしてではなく、顧客との一次情報を取得し、構造化し、AIに渡すためのデータベースとして取り扱うことを中心に据えたことが、その後のワークフローの柔軟性の担保につながり、半自動化へと導いている。この選択軸こそ、AIネイティブな経営の根幹にある思想である。
Frictioで、会話が資産になる働き方へ
Frictioは、打ち合わせの会話を録音し、文字起こしと要約まで自動で作ります。その記録は、MCPサーバー・Public API・Webhookを通じて、お客様のシステムから丸ごと取り出せます。
記録をつくる手間をなくすところまでがFrictioの役割で、その先の業務をどう組むかは、お客様の設計に委ねられています。接続の仕様と権限の扱いは、開発者プラットフォームのページをご覧ください。
あわせて読みたい導入事例


